小規模多機能型居宅介護みんなの家・稲城長沼
【一日一心】同じ空の下 「青春編」
みなさん、こんにちは。
みんなの家・稲城長沼の投手、王です!
久しぶりのブログ更新ですが、みなさんは元気に過ごされていますか。
今朝、子供の健診があり、生まれたときは未熟児だった我が子が、今では元気いっぱいに9㎏にまで成長していることが分かりました。
小さな手で指差しながら「これがほしい!」と伝えるその姿は、とても可愛かったです。
妻が「ドンドン大きくなっているね」と目に涙を浮かべながら喜ぶ様子を見るたびに、
私たち家族にとっては毎日が特別で、予想もしないサプライズで満ち溢れています。
野球で取り戻す青春
最近、よみうりランドにジャイアンツの新しい球場ができたと聞き、
今日は20代から巨人ファンとして情熱を燃やし続けた男性利用者3名と一緒に球場へ出かけました。
仕事の合間にも趣味として野球を愛し、初めてこんなに近い距離で球場の熱気を感じることができたのは、まるで夢のよう。
「俺、昔は野村さんと話したことがあるんだよ。何を話したのかなぁ…」
「大谷選手は何番?え?いないの…」
「おおー!ほら見て!ナイスバッティング!」
「今日の試合は当たりだな!やっぱり野球は面白いね!」
彼らの顔に浮かぶ笑顔は、再び純粋な少年時代の情熱を蘇らせ、見るたびに私の心が温かくなりました。
利用者さまの現実
しかし、現実はいつも甘くはありません。
私たちの施設では、外出の機会が限られており、最近、職員さんからは認知症の進行が懸念される報告も受けました。
ある方は、「家でゆっくり過ごしたいのに、毎日デイサービスに行かせられる」「男はつらいよ」と苦笑いする姿がありました。
ある方は、昼夜逆転の日々の中、朝の4時に施設のカラオケ機械をつけ、情熱的に歌っていました。
食べたことを忘れ、いつもご飯を欲しがっています。
ある方は、免許証の更新を望みながらも、多摩川周辺で道に迷い警察に保護されるという出来事があり、数日後にはそのことをすっかり忘れてしまっていたのです。
「俺、警察署になんて行ってないよ。それより、昨日はすごかったよ。お姉さん四人に囲まれて、ナンパされちゃってさ!」と、
その軽い口ぶりに、私は思わず笑ってしまいましたが、同時に胸が締め付けられました。
寄り添う日々
認知症の方々は、特別な出来事を大げさに語るのではなく、
日常にあふれる何気ない気持ちを、どう表現すればよいのか、その難しさに悩んでいるのかもしれません。
声にならず、心の中にしずかに積もる思いは、時に不思議な行動となり、家族とのすれ違いや摩擦となって現れるのです。
認知症の方と初めて出会ったとき、私に対しては険しい表情と警戒心が溢れていました。
しかし、私は心から、利用者さまの心に寄り添いたいと願い、一緒に動物園へ行き、ご飯を食べ、コンサートを楽しみ、買い物や通院にまで同行しました。
少しずつ、少しずつ、利用者さまの閉ざされた心の扉は、温かな光に照らされてゆっくりと開かれていったのです。
利用してから数ヶ月後に、
初めて施設の温かな風呂に浸かったときの横顔、
初めてショートステイを利用したとき、いびきをかいてぐっすり寝られた姿、
初めてスターバックスを味わい、初めてオペラのコンサート、初めて保育園の子と一緒にテレビゲーム、初めての大人の学校に参加…
「私の携帯は24時間いつでも繋がっているから、何かあればすぐに電話してね」とお伝えしたので、
夜中の1時、2時に電話がきて、さらには5時、6時に、自転車で施設へと駆けつけることで、利用者さまの生活の中でも確かな安心感がありました。
絶えない繋がり
認知症になっても、人と人との繋がりは決して消えません。
人生の大きな変わり目に、そっと温かな手を差し伸べる人がいるのです。
その手に気付いて、心を開いてもらうまでは、寄り添うことが大切です。
認知症になっても、独りぼっちでも、決して孤独ではない。
僕は、利用者さまを特等席で見守っている。
今を、そして明日も、ともに歩んでいきましょう。
たとえ僕のことを忘れていても。また一緒に始めよう。
笑顔の時も涙の時もどんな記憶を積み重ねても、一緒に夢の破片を集めて、パズルのように埋めていこう。
今日も、ありがとうね。同じ空の下、一緒に歩いていくこと、心から感謝しています。

