小規模多機能型居宅介護みんなの家・稲城長沼
【一日一心】僕が一番ほしいもの
YO、みなさん。
こんにちは。
最近は「どうする家康」にハマってる、みんなの家・稲城長沼の王です。
そろそろ中国の旧正月で、また「ほしいもの」を考えるタイミングですよね。
でも最近、年のせいなのか、ほしいものがパッと思いつかないです。物欲が薄れたというか、「まだ使えるやん精神」が強くなったというか。
嫁が「パジャマ新しいのを買ってあげるよ」と優しく言ってくれるのですが、
僕が「まだ着られるから」と断ると、今度は「じゃあ靴でも買えば?」と聞かれると、「まだ数年は履ける」とか言い出した。
服も靴もどっちも譲らない、堅実なのかケチなのかよくわからない我が家の会話。
今年もこの調子でスタートしました。
ただ、物欲は薄れても気になるのは健康のこと。僕の親、嫁の親、全員の膝がガクガクなってしまった。
嫁も息子もよく風邪を引く。残りの僕が「次は自分か?」と言い出したらすぐ熱が出て、何回仕事を休むことになったこともある。
今年はこの偏った流行が落ち着いてくれることを願うばかりです。
というわけで、今年の「ほしいもの」は家族全員の健康!
膝が痛いとか風邪を引いたとか言いながらも、みんなで笑い合える日々が続けばいいなと思っています。あと、嫁がしつこく聞いてくる「パジャマ新調する?」の答えも、ちゃんと決めようと思います。
やっぱり新年から断り続けるのも、なんだか申し訳ないので……
期待と胸の高鳴り
今日は、みんなの家の外出イベントの日。
隣の府中市で行われるオペラ合唱のコンサートに、利用者さんたちと出かけた。
初めてオペラを聴くという利用者さんたちは、
「どんな音楽が聴けるのだろう」「こんな年でオペラも聞けるなんて思わなかった」「テレビでもみたこともないから、楽しみだ!」と、次々に弾む声が車の中に満ちていく。
期待が膨らみ、何か特別な時間が始まる予感に、僕の胸もじんわりと熱くなっていた。
心に響く歌声
会場に着き、幕が上がると、ステージから力強い歌声が響いた。
その声の深さと広がりに、誰もが息をのむ。
「すごいねぇ……胸に沁みるわ」
「こんなに素敵な声、初めて聴いた」
その声に合わせて、つま先を揺らす人、手拍子をする人、小さな声で歌う人。
それぞれが音楽に触れ、自然と笑顔になっていく。日常の穏やかな顔とはまた違った、生き生きとした表情に、音楽の持つ力を改めて感じた。
「また来たい」の言葉
2時間のコンサートが終わるとき、利用者さんの目には涙が浮かんでいた。
「いつも新しい体験させていただき、ありがとう!」「また来たい!」と、何度も繰り返してくれる。
その言葉に、自然と会場の出口でも笑顔が広がっていった。
「2月には民謡コンサートがあるのよ」と話すと、「それも行きたいわ!」と皆さんが嬉しそうに答えてくれた。
その時、ある利用者様が笑いながら一言。
「歌手の息は長いけど、俺も長生きしなきゃなぁ!」
その冗談に、周りからは笑い声が沸き起こる。
コンサート後の余韻に浸りながら、次回への期待に胸を膨らませる皆さんの様子が、とても楽しそうだった。
心を殺しても
施設に戻ると、一人の利用者さんに呼ばれて、僕にこう言った。
「あなたは偉いね、よくやっている、感謝感激!!」
「王さん、あなたはどれほど自分の心を殺して、私たちのために頑張っているの?」
僕は一瞬言葉を失った。
「心を殺している」…
そういう瞬間はあるかもしれない。
自分のやりたいこと、楽しみたいことを少し脇に置いて、目の前の人たちの笑顔のために尽くす毎日。
それでも、それが苦しいとは思わない。
この仕事を選び、この場所を選んだ僕は、ここで誰かを救うことができるのだから。
ここにいる自分が、今は最も輝いているような気がしていた。
自分の心を殺さなければ、誰かを救うことはできない時がある。
それは苦しみではなく、人としての強さだ。
素敵な仲間たち
その思いを強くさせてくれるのが、ここで共に働く仲間たちだ。
休みの日にも手伝いに来てくれる運転手さん。
アキレス腱を切っても、誰よりも先に「助けが必要なら行くよ」と駆けつけてくれる。
業務を懸命に回し、全力でサポートしてくれる社員たち。
足の指を骨折しながらも、「みんなを連れて楽しもう」と現場をまとめてフォローしてくれる。
レクの周知、集計など完璧にやってくれるパートさん。
「王さんは月1回熱出るから、あたしは常に出勤の準備をしているのよ」と冗談を言ってくれる。
みなさんは60歳を超えているが、その背中からは年齢を超えた強さと優しさが滲み出ている。
この場所で見つけた宝物
彼らの姿を見るたびに思う。
この場所には、誰かのために「心を殺して」でも尽くす人たちがいる。
犠牲ではなく、そこには深い愛と誇りがある。
僕はそんな人たちと同じ場所で働けることを、心から幸せに思う。
「みんなの家」は、単なる介護施設ではない。
ここは、人生の最後に「見つけられてよかった」と思える家なのだ。
利用者さんにとっても、
スタッフにとっても、
そして僕自身にとっても。
支えてくれる利用者たち
思い返せば、先週僕が体調を崩して休んでいたときのこと。
2人の利用者さんが自転車で施設に駆けつけて、1人は青汁と龍角散。
もう1人は栄養剤とみかんをくれた。
「これ、王さんのために買ってきたの」、「あなたが倒れたら私たちが困りますよ」と。
「良くしてくれてありがとう、王さん」「今後もよろしくお願いします」と手を握ってくれるとき、
その手の温かさに、僕は思わず涙がこぼれそうになった。
僕が一番ほしいもの
ここまで来た道を、振り返ってみたら、
僕のあげたものでたくさんの、人が幸せそうに笑っていて、
それを見た時の気持ちが僕の、探していたものだとわかった。
今まで一番素敵なものを、
僕はとうとう拾う事が出来た。
ーーーー 慎原 敬之 「僕が一番欲しかったもの」
僕の手の中には、どんな宝石よりも眩しいものが輝いていた。
それは、利用者さんたちが見せてくれる笑顔。
時には一緒にこぼした涙、そして共に過ごした何気ない温かな時間。
その一つひとつが、僕の心を照らし、そっと支えてくれていたのだ。
「みんなの家」での日々は、僕の人生の中で、
こんなにも「誰かのために生きる喜び」を感じられる場所に出会えるなんて、想像もしていなかった。
今ならはっきりと言える。この歌詞の通りだと。
僕にとって「一番ほしいもの」とは、
春の陽だまりに似て、凍えた心を解かしてくれる、
みなさんの微笑みだ。
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